『劇場版Fate/stay night [Heaven's Feel]第1章』が初見お断りの理由【ネタバレあり・感想】

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Fate/stay night』のルートの中でもっとも人気が高いと言って差し支えないだろう、ファン待望の桜ルート『Fate/stay night [Heaven's Feel]』の映像化。しかし、Fateに初めて人にとっては、敷居がとても高い1作となっており、『Fate/Zero』『Fate/stay nightUnlimited Blade Works』を鑑賞しただけの私からしても、お決まりをダイジェストにした構成にいささか面を食らった。

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3部作の1作目とは思えないほどのダークな世界観

私は凛ルートを映像化した、『Fate/stay nightUnlimited Blade Works』よりも、『Fate/Zero』の方が好みだ。最初に『Fate/Zero』を見たこともあり、遊びのない冷酷な殺し合いこそがFateだと考えている。その観点からすると、『Fate/stay nightUnlimited Blade Works』は、期待に答えてはくれていなかった。簡単に言うと戦いが甘いのだ。マスターの半分は、子供ということもあるのだろう。そして何より、マスターが誰なのか、裏をかく戦術が皆無なこともあり、戦いに物足りなさを感じていた。最終的な、 『Unlimited Blade Works』には、アーチャーの正体も含め、満足はしていたのだが、手放しに賞賛はできなかった、というのが本音だ。

話を『Heaven's Feel』に戻そう。『Heaven's Feel』の感想を一言で表現すると、とても好み、ということになるだろう。『Unlimited Blade Works』で不満に思っていた、戦いの甘さは真・アサシンというジョーカーによって、不協和音を奏でることにより解消。Unlimited Blade Worksで活躍を見せていたキャスターとランサーをバッサリと退場させてしまう、圧倒的なインパクトによって、従来の物語とは別物だと高々と宣言。ルール違反とも言える荒技により、あっという間にスクリーンに引き込まれてしまった。正直、このスピード感で、2作目、3作目は息が続かなくなるだろうと心配になるほどだ。『Fate/Zero』の心理戦とはまた違う、ホラーのような演出により、過去の『Fate』とは一線を画した雰囲気となっている。好き嫌いがあるだろうが、個人的にはとても好みだった。『Fate』初見の人にとっては、ハード過ぎるのでは、とも思う。

 

理想のヒロイン像

Unlimited Blade Worksで、ほとんど空気だった今回のヒロイン・桜。これはみんなが熱狂するだろうな、と思わせる完璧なヒロイン像を作り上げている。歴代のヒロインランキングでも上位に入るのではないだろうか。清楚でミステリアス、そして一途。ヒロインとしての必要な要素を全てを網羅。一種の危うさが、作品の雰囲気とマッチして、『Heaven's Feel』の独自のダークで、寂しげな空気を作り出している。今作では、桜の意図が全くと言っていいほど見えないし、ギルガメッシュから桜に伝えられた言葉等、伏線はとても多い。2作目、3作目と答えが出ていくのだろうが、悲しい想像しかできないので、覚悟を持って続編には挑みたいと思う。てか、『Fate/Zero』の第一話での衝撃シーンを思い出すと、どうにか桜には幸せになってほしいと思う。

 

「動」「静」のアニメーション

ufoの作品なので、アクションシーンを楽しみにしていたが、想像以上の出来となっていた。真・アサシンVSランサー戦のカーチェイスと追いかけっこの「動」、セイバーとライダーとのオープニング試合の「静」。アクションにメリハリをつけ、なおかつ新たな表現を目指している所に、制作者の意気込みを感じた。また、街の描写は美しく、校舎の紅い夕日のイメージは、自分のノスタルジーを思い起こしてくれるし、雪の降る街の冷たさや寂しさを桜の心と合わせて描写しており、とても美しく表現をされていた。もう全体としてのアニメーションは、日本最高レベルだと思うし、十分映画館で、映画として代金を払ってみてほしいと思わせてくれる。

 

それだけで価値があるAimer『花の唄』

公開当初は、深夜アニメのCMで大量に流れていたAimer『花の唄』。iTunesで購入するほど、個人的にはどハマりした。もうエンドロールでこの曲が流れるだけで切なさでいっぱいになり、この曲だけで、桜の切ない表情と街の情景が浮かぶ。『Fate』では、藍井エイルやLISA、Kalafinaなどが作ってきた名曲がありますが、その中でも『花の唄』は最高傑作と言っても過言ではないだろう。



次作以降では、すでに半分のサーバントが脱落(セイバーどうなるのかな?)していることもあり、より戦いが激しさを増していくことが予想される。その中で、真・アサシンやギルガメッシュ、マスターでは、言峰綺礼や間桐臓硯など、物語の鍵を握る強者たちの中で、士郎や凛、そして桜はどうなっていくのか…3部作の1作目としては、見応え十分な傑作。